2023共通テスト 生物基礎 解説とまとめ

しんぞう先生

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6年分の大問1の解説本

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かんぞうくん

3回目の共通テスト

平均点

「24.66点」。理科基礎4科目の中で、生物基礎の平均点が最も低かったです。

出題傾向

今回も会話文があり、日常生活に照らし合わせた問題が出題がされました。また、共通テスト時代の出題形式の傾向が固まってきたようにも見えます。教科書に出てきていない用語や実験材料が登場します。しかし、それらは問題文にきっちりと説明がされていて、しっかりと読み込めば理解できるものばかりです。

それらと、教科書に掲載されている知識を組み合わせて考える、という思考力を問うタイプの出題形式です。

 

この傾向は今後も続くことが予想できるので、日々の生物学に関するニュースなどにはアンテナを貼っておいた方が良いでしょう。

しんぞう先生

では、問題と解説、行ってみましょう!

第1問A

(a)地球上に出現した最初の生物は原核生物であり、原核生物の進化によって真核生物が出現したと考えられている。 真核細胞の一部は葉緑体を持つが、葉緑体の起源は真核細胞に共生したシアノバクテリアであるとされる。(b)長い共生の歴史のなかで独立して代謝を行うことができなくなったシアノバクテリアが、葉緑体になったと推測されている。

A問1 原核生物と真核生物

太字(a)に関連して、原核細胞と真核細胞の比較に関する記述として最も適当なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選べ。

 

①核酸は原核細胞にも真核細胞にも存在するが、 核酸を構成する塩基の種類は両者で異なる。
②酵素は原核細胞には存在しないが、 真核細胞には存在するので、真核細胞では原核細胞よりも代謝が速く進む。
③ATP は原核細胞でも真核細胞でも合成されるが、原核細胞には ATP合成の場であるミトコンドリアは存在しない。
④細胞の大きさは原核細胞よりも真核細胞のほうが大きいことが多いが、原核細胞と真核細胞のどちらにも1個の細胞を肉眼で観察できるものはない。
⑤呼吸は真核細胞の多くが行うが、原核細胞は行わない。

A問1の解答 ③   配点 3点

これは完全な「知識」問題ですね。

かんぞうくん

しんぞう先生

「原核細胞と真核細胞の違い」「DNA」「代謝」の知識を複合して聞いてきてる。それぞれの知識を組み合わせて考える必要があるね。
ちょっとまとめてみました!

かんぞうくん

①について。
地球上のすべての生物は共通の祖先を持つので、遺伝子が持つ核酸も共通している。
・DNAはデオキシリボ核酸といって、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の塩基を持つ。
・RNAはリボ核酸といって、A、U(ウラシル)、G、C、という塩基を持つ。T(チミン)の代わりにU(ウラシル)。
②について。
酵素はタンパク質からできている「触媒」。触媒とは化学反応のスピードを速めるやつで、反応後も触媒自体の変化はない。細胞の中では原核も真核も化学反応が起きているから、双方ともに酵素は存在する!
④について。
真核細胞には肉眼で観察できるものもある。教科書にも出ている単細胞生物のゾウリムシは肉眼でも見ることができる。
⑤について。
「我々が行う呼吸(スー、ハー、スー、ハー)」と「細胞の呼吸」は意味が違い、細胞の呼吸は有機物を分解してエネルギーを取り出すために行われるもの。原核細胞もエネルギーを必要とするから「呼吸」はしている。

しんぞう先生

よくできました。ミトコンドリアは元々は単独で生きていた原核生物だったので膜を持つ。それが、別の細胞の中に入って一緒に生活(=共生)するようになった。だから膜を持ってる。原核細胞は、DNAですら膜(=核)に包まれていないので、細胞内には膜で包まれたものは存在しない。ということで、原核細胞の中にはミトコンドリアは存在しないよ。だから正解は③になる。

A問2 細胞内共生説(葉緑体)と遺伝子発現の複合問題

太字(b)に関連して、葉緑体を持つ藻類が動物細胞に取り込まれて共生している例が知られている。この例で、藻類が動物細胞に取り込まれた直後と、その共生の関係が長く続いたときとを比べた場合にみられる、藻類と動物細胞の代謝の変化に関する次の文章中の(ア)〜(ウ)に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

 

藻類から動物細胞へ(ア)が供給されるため、動物細胞が生存できる可能性が高くなると考えられる。藻類は、動物細胞が生成するアミノ酸などを栄養分として利用するようになり、その結果、この栄養分を取り込む働きを持つタンパク質の遺伝子の発現が(イ)する。動物細胞では、この栄養分を生成するために働くタンパク質の遺伝子の発現が(ウ)する。

A問2の解答 ⑤   配点 3点

しんぞう先生

これは問題文をしっかり読むことが大切。まず、動物細胞が生存するためには、二酸化炭素ではなく、藻類が作る糖分が必要になるよね。
ちょっと文章をまとめてみました。

かんぞうくん

「藻類」
動物細胞が作るアミノ酸などの栄養分を利用する。
→そのためには、栄養分を取り込む働きをもつタンパク質が必要になる。
→そのタンパク質の遺伝子の発現は上昇する。
「動物細胞」
藻類が必要とする「アミノ酸などの栄養分」を作る。
→栄養分を作るためには、そのための遺伝子の発現が上昇しなければならない。

しんぞう先生

だから、正解は⑤になる。

 



第1問B

培養液で満たしたペトリ皿の中で動物細胞を培養し、増殖している細胞の様子を観察したところ、(c)細胞周期の間期の細胞はペトリ皿の底に貼り付いて扁平であったが、分裂期の細胞はペトリ皿の底から球形に盛り上がっていた。 (d)培養細胞が細胞周期のどの時期にあるのかは、 細胞周期における特定の時期に発現するタンパク質を指標として調べることができる。また、このことは、(e) DNAが複製される仕組みを利用することによっても調べることができる。

B問3 細胞分裂の計算問題

太字(c)に関連して、ヒトの体細胞では、細胞周期に伴う DNA の複製は、DNA の複数の場所から開始される。1回の細胞周期の間に、DNA の一つの場所で1×106 塩基対の DNA が複製されるとすると、1個の体細胞の核で全ての DNA が複製されるためには、いくつの場所で複製が開始される必要があるか。その数値として最も適当なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ。 ただし、ヒトの精子の核の中には、3×109 塩基対からなるDNAが含まれるとする。

 

① 1500    ② 2000  ③ 3000  ④ 6000  ⑤ 12000  ⑥ 24000

B問3の解答 ④   配点 3点

しんぞう先生

この問題は「1個の体細胞の核で全てのDNAが複製されるためには、いくつの場所で複製が開始される必要があるか」と聞いているよ。
精子と卵が受精して受精卵(=体細胞)になるから、えーと、ややこしい・・・。

かんぞうくん

しんぞう先生

ヒトの精子の核の中に「3×109塩基対」がある。ということは卵の中にも「3×109塩基対」があるよね。精子と卵が受精して受精卵(=体細胞)になるから、1個の体細胞の中には「2×3×109塩基対」があることになる。
そうか。問題文中に「DNA の一つの場所で1×106塩基対の DNA が複製されるとすると」とあるから、1個の体細胞の核で全ての DNA が複製されるためには、6×103箇所で複製が始まればいいのか。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。こんな計算式になるね。「(2×3×109塩基対)=(1×106塩基対)×(6×103箇所)」
ややこしい計算問題でした。これも文章をよく読まないと。体細胞のことが質問されてるから、受精卵のことを考えなければいけない。うっかり精子の数字だけで計算してしまうところでした。

かんぞうくん

B問4 タンパク質の発現から、細胞周期を探る

太字(d)に関連して、タンパク質 Xは、分裂終了直後に発現を開始し、DNAの複製中に減少していく。 他方、タンパク質Yは、DNAの複製が始まると発現を開始し、分裂終了直後に急速に減少する。 ペトリ皿の底に貼り付いている扁平な細胞についてタンパク質X とタンパク質Yの発現を調べたところ、一部の細胞は、タンパク質 X のみを発現し、タンパク質Yを発現していなかった。この細胞における細胞周期の時期として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① G1期  ② G2期  ③ S期  ④ M期

B問4の解答 ①   配点 3点

しんぞう先生

この問題は、細胞周期の図を書いて考えると解けるよ。ちょっと書いてみて。
こんな感じでしょうか。

かんぞうくん

さらに問題文を読むと、こう書いてあります。

かんぞうくん

しんぞう先生

ということは、タンパク質Xだけが発現するのは、「G期」ということになるね。

B問5 細胞周期をグラフから読み取る

太字(e)に関連して、 細胞周期がばらばらで同調していない多数の培養細胞を含む培養液に、 細胞内に入り複製中のDNAに取り込まれる物質 A を加えて、短時間培養した後に細胞を固定した。 細胞ごとに物質Aの量と全DNA量を測定したところ、 図1の結果が得られた。図中のエ〜カの三つの細胞集団のうち、カの細胞集団における細胞周期の時期として最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。ただし、物質Aは、複製中の DNAに取り込まれるだけでなく、 細胞周期のどの時期においても細胞質に少量残存する。また、物質 A を加えて培養する時間は細胞周期に比べて十分に短いものとする。

① G1期   ② G2期   ③ S期

④ M期    ⑤ G1期とS期   ⑥ G1期とM期

⑦ G2期とS期   ⑧G2期とM期

B問5の解答 ⑧   配点 4点

しんぞう先生

グラフが出たら、縦軸と横軸が何を示しているかを見ること。今回は、縦軸は「物質Aの量」で横軸は「全DNA量」だね。
この問題は、「カ」の細胞集団の細胞周期の時期が聞かれてる。横軸の「全DNA量」は相対値で「2」か。DNAが複製されて2倍になっている状態、ですね。そのような細胞周期の時期は、DNAの複製を終えて、分裂準備に入っている「G2期」と分裂真っ最中の「M期」です。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。答えは⑧だね。

 



第2問A

「胆汁には脂肪の消化を助ける作用がある」 と授業で学んだマオさんとナツさんは、この作用について調べることにした。

 

マオ
脂肪の分解は消化酵素のリパーゼが行っているから、 胆汁は脂肪を直接分解しているのではないということだね。 胆汁はリパーゼの作用に関わっているのかもしれないね。
ナツ 
実験して調べてみようよ。 脂肪がリパーゼで分解されると、 脂肪酸ができて反応液が酸性に傾くはずだから、この変化を検出する方法を考えればいいね。牛乳には脂肪が含まれているから、 基質(酵素が作用する物質)に使えないかな。
マオ
牛乳にリトマスの粉末を溶かしたリトマスミルクというのがあるよ。リトマス紙と同じように、 pHがアルカリ性から中性の範囲だと青色に、酸性だと赤色になるんだ。 アルカリ性 ・酸性の度合いが強くなると、それぞれの色も濃くなるよ。
ナツ
リトマスミルク中の脂肪が分解されれば、 色が変化するはずだね。 さっそく実験1をやってみよう。

 

実験 1
試験管 a 〜 e を用意し、表1に従って、リトマスミルク、リパーゼ溶液、100°Cで処理したリパーゼ溶液、蒸留水、 水分を除去して粉末にした胆汁(以下、胆汁の粉末)を、それぞれ該当する試験管に入れて、よく攪拌した。37°Cで1時間反応させた後、 反応液の色調を観察したところ、 図1のようであった。なお、胆汁の粉末がリトマスミルクの色を直接変化させることはないものとする。

 

A問1 脂肪の分解(胆汁とリパーゼの働き)

実験1の操作および結果から、二人は次の結論 1〜3を得た。 これらの結論を得るために二人が比較した試験管の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⓪のうちからそれぞれ一つずつ選べ。

 

結論1 : リパーゼには、脂肪を分解する作用がある。
結論2 : リパーゼは、高温で処理すると、作用しなくなる。
結論3 : 胆汁には、リパーゼによる脂肪の分解を助ける作用がある。

 

①  a . b    ②  a , c   ③  a , d   ④  a , e   ⑤  b , c ⑥  b , d    ⑦  b , e   ⑧  c , d   ⑨ c , e    ⓪  d , e

A問1の解答 結論1:⑥  結論2:⑧ 結論3:⓪
配点 完答4点  完答ではない場合はそれぞれ1点

リトマスミルク!こんなのがあるんですね。リトマス粉末を牛乳に溶かしたものなのか。

かんぞうくん

しんぞう先生

この実験は、牛乳(=脂肪)が分解されると脂肪酸(←酸性の物質)が出てきて、リトマス紙のように液体が赤くなるという性質を利用して、リパーゼと胆汁の関係をつかもう、というものだよ。
結論1は、bとdの比較で分かります。この2本の違いはリパーゼ溶液の有無で、それ以外は同じ条件です。リパーゼがある方が赤くなっているので、「リパーゼは脂肪を分解する作用がある」と言えます。だから答えは⑥になります。

かんぞうくん

しんぞう先生

リパーゼは酵素だね。酵素はタンパク質からできているので、熱を加えると「タンパク質の熱変性」により酵素の力が失われる。この比較ができる試験管はどれとどれだろう?
これはcとdの比較で分かります。c は熱せられたことで力を失ったリパーゼで、dは普通のリパーゼ。この2本の結果を見れば結論2を導くことができます。だから答えは⑧です。

かんぞうくん

しんぞう先生

では結論3は?胆汁が入っているのはe の試験管だけ。
胆汁の有無以外の条件がeと同じ試験管はd です。だから答えは⓪です。

かんぞうくん

A問2 胆汁は脂肪を乳化している?仮説を立てて検証実験

マオ
胆汁はどのようにして脂肪の消化を助けているのだろうね。 資料を調べたら、「胆汁は脂肪を乳化する」 と書いてあったけど。
ナツ
乳化って、 食用油にセッケン水を入れて振ったときに、 油分が微粒子になって水中に分散し、 白く濁る現象のことだね。 胆汁による乳化がどんなものか、実験2で確かめてみよう。

 

実験2
試験管のそれぞれに蒸留水2mLと食用油1mLを入れ、さらに試験管 g にのみ胆汁の粉末を入れた。 それぞれの試験管をよく攪拌し、室温で静置した。 1時間後、図2のように、試験管には層 X と層Yが、試験管gには層 X、層 Y、および層Zが、それぞれ観察された。

 

二人は、実験1 実験2の結果から、「胆汁は、リパーゼによる脂肪の分解を、脂肪を乳化することにより助けている」と仮説を立て、その検証実験と、仮説が正しい場合に得られる結果を考えた。この検証実験と予想される結果について述べた次の文章中の(ア) 〜(ウ)に入る語句の結合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

2本の試験管を用意し、一方には実験2で得られた層(ア)を、他方には層(イ)を、それぞれ等量入れる。 次にリパーゼ溶液とリトマスの粉末を入れてよく撹拌し、37°Cで1時間反応させた後、試験管内の液体の色調を比較する。 仮説が正しければ、2本の試験管のうち、層(ウ)を入れた試験管が、より濃い赤色になる。

 

 

A問2の解答 ④   配点 3点

しんぞう先生

コップの中の水に、油を1滴落としたとする。水と油は溶け合わないから、いつまでたっても分離したままなのだけど、1滴の油の存在位置は、水面?それともコップの底の方?
経験的に、1滴の油は水面に浮かんでいます。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。なので、図2の 層Xは食用油で、層Yは蒸留水だね。試験管に入れた量的にも分かるね。そして、層Zは胆汁を入れたことで乳化した油分を含んでいる。
この実験は、「胆汁は、リパーゼによる脂肪の分解を、脂肪を乳化することにより助けている」という仮説を検証する実験だから、仮説が正しければ、層Zを含む試験管の方がより濃い赤色になるはずです。だから、答えは④です。

かんぞうくん

 



第2問B

免疫には、(a)物理的・化学的な防御を含む自然免疫(b)獲得免疫(適応免疫) とがある。また、免疫を人工的に獲得させ、感染症を予防する方法として、(c)予防接種がある。

B問3 自然免疫

太字(a)に関する記述として誤っているものを、次の①〜⑤のうちから一つ選べ。

 

① マクロファージは、細菌を取り込んで分解する。
② ナチュラルキラー (NK) 細胞は、ウイルスに感染した細胞を食作用により排除する。
③ だ液に含まれるリゾチームは、細菌の細胞壁を分解する。
④ 皮膚の角質層や気管の粘液は、ウイルスの侵入を防ぐ。
⑤ 汗は、皮膚表面を弱酸性に保ち、細菌の繁殖を防ぐ。

B問3の解答 ②   配点 3点

しんぞう先生

物理的・化学的な防御を含む自然免疫、というのは3つの働きがあるよ。
皮膚や粘膜によるバリアー化学的な戦い食作用、の3つですね。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうです。①は食作用、③は化学物質での戦い、④は皮膚や粘膜によるバリアー、⑤は化学的な戦い、です。
②のリンパ球であるNK細胞は、食作用をしないのでこの文章が違います。

かんぞうくん

しんぞう先生

確かに、NK細胞も自然免疫で活躍するけど、食作用ではたらく細胞は、好中球樹状細胞マクロファージの3種類だね。

B問4 獲得免疫の中の「体液性免疫」

太字(b) に関連して、抗体産生に関する次の文章中の(エ)に入る語句として最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 

ウイルス W が感染した全てのマウスは、10日以内に死に至る。ウイルスW を無毒化したものをマウスに注射したところ、2週間後、マウスは生存しており、その血清中にウイルス Wの抗原に対する抗体が検出された。 この過程において、マウスの(エ)の接触は重要な役割を果たしたと考えられる。

 

① 胸腺における樹状細胞とヘルパーT細胞
② 胸腺における樹状細胞とキラーT細胞
③ 胸腺におけるヘルパーT細胞とキラーT細胞
④ リンパ節における樹状細胞とヘルパーT細胞
⑤ リンパ節における樹状細胞とキラーT細胞
⑥ リンパ節におけるヘルパーT細胞とキラーT細胞

B問4の解答 ④   配点 3点

しんぞう先生

まず、胸腺とリンパ節について。胸腺は、T細胞のトレーニング場、とも言える場所だよ。きちんとT細胞として活躍できるようになるための訓練をする場所だね。だから、この時点で④から⑥に絞られる。
キラーT細胞は「細胞性免疫」ではたらく細胞ですよね。「抗体」は体液の流れに乗っていくから、この問題は「体液性免疫」のことが問われています。だから、正解は④になります!

かんぞうくん

B問5 予防接種

太字(C)に関連して、ウイルス W を無毒化したものを注射してから2週間経過したマウス (以下、マウス R)、好中球を完全に欠いているマウス (以下、マウスS)、 およびB細胞を完全に欠いているマウス(以下、マウスT) を用意し、実験 1 〜 3 を行った。 後の記述 ( j ) 〜 ( o ) のうち、実験 1 〜 3 でそれぞれのマウスが生存できたことについての適当な説明はどれか。その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

 

実験 1
マウス R に無毒化していないウイルス W を注射したところ、このマウスは生存できた。
実験2
マウスSに、マウスRの血清を注射した。その翌日、さらに無毒化していないウイルス W を注射したところ、このマウスは生存できた。
実験3
マウスTに、ウイルス W を無毒化したものを注射した。その2週間後に、さらに無毒化していないウイルス W を注射したところ、このマウスは生存できた。

 

( j )     実験1では、ウイルス W の抗原を認識する好中球が働いた。
( k )    実験1では、 ウイルス W の抗原を認識する記憶細胞が働いた。
( l )     実験2では、 ウイルス W の抗原に対する抗体が働いた。
( m )   実験2では、ウイルス W の抗原を認識する記憶細胞が働いた。
( n )    実験3では、ウイルス W の抗原に対する抗体が働いた。
( o )    実験3では、ウイルス W の抗原を認識するキラーT細胞が働いた。

 

① ( j ) ( l ) ( n )   ② ( j ) ( l ) ( o )  ③ ( j ) ( m ) ( n )   ④ ( j ) ( m ) ( o )
⑤ ( k ) ( l ) ( n )  ⑥ ( k ) ( l ) ( o )    ⑦ ( k ) ( m ) ( n )  ⑧ ( k ) ( m ) ( o )

 

B問5の解答 ⑥   配点 4点

しんぞう先生

実験1について考えよう。マウスRの体内にはウイルスWとの戦い方を記憶しているリンパ球がいる。この細胞を記憶細胞というね。だから( k ) が正しい。
実験2は、マウスSは好中球がいない状態ですね。なので食作用は起こらないマウス。そこに「マウスRの血清を注射」か。血清の中にはマウスRの体内で作られた抗体(=武器)が入っているから、好中球がいなくても、この抗体によりウイルスWを注射しても生存できたんですね。正解は( l ) です。

かんぞうくん

しんぞう先生

実験3について。マウスTは、B細胞がないマウスね。抗体を作ることができないマウス、ということだな。ということで、( o ) が正解になる。

 



第3問A

水槽で水草と魚を一緒に育てるときには、(a) 水草の光合成を促進させるために、図1のように光を当て二酸化炭素を送り込むとよい。また、ろ過装置を して(b) 硝化菌(硝化細菌)を増やすことも重要である。

A問1 光合成の概念

太字(a)に関連して、 光合成に関する次の文章中の(ア)〜(ウ)に入る語の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

 

水草は、光合成により光エネルギーを(ア)エネルギーに変換し、有機物中に蓄える。光合成は同化の一種であり、(イ)が生成される過程や(ウ)が生成される過程も、同化に相当する。

 

 

A問1の解答 ⑤   配点 3点

しんぞう先生

光合成について、ざっくりとした概念が頭に入っているとこの問題は楽勝だよ。
最終的に光エネルギーがATPのエネルギーに変換されるので、「光エネルギー」から「化学エネルギー」になります。

かんぞうくん

しんぞう先生

「同化」と「異化」についてはこうだったね。「同化」は単純な物質から複雑な物質を作る際にエネルギーも吸収すること。「異化」は同化の反対で、複雑な物質を単純な物質に分解する際にエネルギーが放出される、という仕組みだった。
単純な物質であるグルコース、これらを集めてより複雑なグリコーゲンを作るんですよね。そして、ADPに1つのリン酸をくっつける時、その結合部分に化学エネルギーを閉じ込めてATPを作るんでした!だから正解は⑤です。

かんぞうくん

A問2 有機窒素化合物を作るまでの流れ

太字(b)に関連して、 魚の餌として水槽内に入ってくる有機窒素化合物 (以下、有機窒素)は、硝化菌 (硝化細菌)などの働きによって無機窒素化合物に変換されていき、 最終的に水草に利用される。 その過程として最も適当なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 

① 有機窒素 → アンモニウムイオン → 硝酸イオン → 水草
② 有機窒素 → アンモニウムイオン → 窒素分子 → 硝酸イオン → 水草
③ 有機窒素 → 硝酸イオン → 硝酸イオン → アンモニウムイオン → 水草
④ 有機窒素 → 硝酸イオン → 窒素分子 → アンモニウムイオン → 水草
⑤ 有機窒素 → 窒素分子 → アンモニウムイオン→硝酸イオン → 水草
⑥ 有機窒素 → 窒素分子 → 硝酸イオン → アンモニウムイオン → 水草

A問2の解答 ①   配点 3点

しんぞう先生

これは完全に知識問題です。自分の体に必要な「有機窒素化合物」ができるまでの流れを把握していないと答えられないよ。
うーん、流れを覚えなければ。まず魚の餌に含まれるタンパク質などの有機窒素化合物が分解される。その時に分解されてできるものはアンモニウムイオンか。そういえば有機窒素化合物である「タンパク質」を作るアミノ酸はこんな化学構造式でしたね。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。アンモニウムイオンから、亜硝酸イオン、硝酸イオン、という流れで変化していく。そして硝酸イオンは水草に取り入れられて「窒素同化」されてタンパク質などを作る。
「窒素同化」って、こういうことですね。調べてみました。『生物が外界から取り込んだ窒素化合物を使って、アミノ酸やタンパク質などの有機窒素化合物を作る』

かんぞうくん

A問3 酸素が十分にある生態系での窒素の循環

水槽の生態系に入ってきた窒素 (N) は、炭素(C) と違って空気中に出ていきにくい。これは、水槽のような好気的な (酸素が十分にある) 生態系では、窒素の循環は生物から生物への経路が主であり、炭素の循環における光合成や呼吸のような、生物と大気との間で直接やりとりされる経路がほとんどないからである。このことを踏まえて、次の操作( a ) 〜 ( c )のうち、水槽の生態系から窒素を取り除くための操作として適当なものはどれか。それを過不足な く含むものを、後の① 〜 ⑦のうちから一つ選べ。

 

( a )   茂った水草を切り取って水槽から取り除く。
( b )   水草を食べる魚を水槽に入れて水草を減らす。
( c )   光の量を減らして水草の成長を遅らせる。

 

① ( a )   ② ( b )    ③ ( c )   ④ ( a ) ( b )  ⑤ ( a ) ( c )   ⑥ ( b ) ( c )   ⑦ ( a ) ( b )  ( c )

A問3の解答 ①   配点 4点

しんぞう先生

この問題も、問題文をじっくり読むと正答にたどり着くよ。着目部分はここ!

「水槽の生態系に入ってきた窒素 (N) は、炭素(C) と違って空気中に出ていきにくい。」

なぜなら、
「水槽のような好気的な (酸素が十分にある) 生態系では、窒素の循環は生物から生物への経路が主であり、炭素の循環における光合成や呼吸のような、生物と大気との間で直接やりとりされる経路がほとんどないから」

これにより、
「光合成により酸素を作るもの」(=水草)を除去すれば水槽の生態系から窒素を取り除くことができる!

ということになる。

そうですか。この問題って、もしも窒素同化の知識が無かったとしても、問題文の読解力があれば正答することができますね。

かんぞうくん

 



第3問B

陸上のバイオーム(生物群系) は (c) 植生を外から見たときの様子に基づいて区分される。世界には、図2のように気温や降水量などの気候条件に対応した様々なバイオームが分布している。

B問4 世界のバイオーム

図2に示すバイオームに関する記述として最も適当なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選べ。

 

① バイオームAは、植物が生育できず、菌類や地衣類、およびそれらを食物とする動物から構成される。
② バイオームBは、亜寒帯に広く分布し、寒さや強風に耐性のある低木が優占する。
③ バイオームDは、厚い葉を持つ常緑広葉樹が優占し、日本では本州から北海道にかけての太平洋沿岸に成立する。
④ バイオームFは、ユーラシア大陸に特有で、他の大陸の同じ気候条件の地域では、バイオーム C、 D、または H が成立する。
⑤ バイオームIは、イネのなかまの草本が優占するが、樹木が点在することもある。

B問4の解答 ⑤   配点 3点

しんぞう先生

このグラフ、教科書に絶対に載っているものだね。覚えてる?
これは授業中にきっちりと覚えました。その時に縦軸と横軸が何を示しているのか、も合わせて覚えると納得することが多かったです。

かんぞうくん

しんぞう先生

縦軸は「年降水量」で、横軸は「年平均気温」だね。例えば、横軸の一番右で、縦軸の一番上は「年中暑くて、降水量もとても多い」ということ。だから熱帯多雨林だね。こんな感じで地球規模で考えると良いよ。旅行に行きたくなるね。
そうですね。あとはそれぞれのバイオームの知識と合わせて答えれば良いですね。

かんぞうくん

しんぞう先生

①から④はこの通り!

①のバイオームAはツンドラ。コケ植物は生育できるのでこの文章は誤り。
②のバイオームBは針葉樹林。高木もあるのでこの文章も誤り。
③のバイオームDは照葉樹林。北海道は夏緑樹林と針葉樹林だから、これも誤り。
④のバイオームFは硬葉樹林。ユーラシア大陸に特有、というのが誤り。北アメリカの西の方のカリフォルニア、オーストラリアの一部にも硬葉樹林は見られる。

ということは正解は⑤ですね。バイオームIは草原のサバンナです。年降水量が少ないから森林にはならないけど、アカシア、バオバブなどの樹木はありますよね。

かんぞうくん

B問5 葉緑体の特性とグラフ

太字(c)に関連して、人工衛星でとらえた地表の反射光のデータを解析することで、現地に行かずに、その場所の植生の様子を推定する技術が開発されてきた。緑葉の量を表す指標 N は、 葉緑体が赤色の光を吸収するが赤外線を吸収しない、という特性を利用して算出する指標で、 赤色光を赤外線と同じだけ反射する場合に 0 、 赤色光を全て吸収して赤外線だけを反射する場合に 1 の値をとる。 北半球でバイオームGが成立している地点における指標Nを調べたところ、 図3のように季節変動していた。 北半球のバイオームCとバイオームEで同様に調べた指標 Nの季節変動を示すグラフとして最も適当なものを、後の①〜④のうちからそれぞれ一つずつ選べ。

 

 

B問5の解答 バイオームCは③  バイオームEは①   配点 それぞれ2点

人工衛星からのデータで色々分かるんですね。すごい。

かんぞうくん

しんぞう先生

「指標N」は、葉緑体の特性(赤色光は吸収、赤外線は吸収しない)を利用したもの。指標が0ならば緑葉がない状態で、指標が1ならば緑葉がある状態を示すよ。
バイオームGは、雨緑樹林ですね。雨季と乾季があり、乾季に落葉するバイオームです。図3のグラフを見ると、なんとなく、指標が1に近い雨季「葉をつけている時期(6-12月)」と指標が0に近い乾季「落葉している時期(1-6月)」に見えます。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。ではバイオームCの夏緑樹林を考えてみよう。
夏緑樹林の特徴は、夏に緑葉をつけ、冬に落葉するという樹林です。この特徴を表すグラフを見ると、③がぴったりです。

かんぞうくん

しんぞう先生

正解!ちなみに樹林の名前に「緑」という漢字がつくものは、落葉する時期がある樹林だと覚えておこう。夏緑樹林と雨緑樹林だね。では、バイオームEの熱帯多雨林と亜熱帯多雨林を表すグラフは?
これは、1年を通して緑葉をつけている樹林だから、①しかありません!

かんぞうくん

しんぞう先生

おっけい!この問題も文章をしっかり読まなければ正答に近づけない問題だったね。特に、「指標N」なんかは教科書に出てこない。でも、問題文にきっちりと説明がされているから、しっかりと読み取って、教科書の知識と照らし合わせながら考えていく、というタイプの問題だったね。
今回の共通テストは3回目のものでした。

かんぞうくん

しんぞう先生

センター試験時代との出題形式の違いがはっきりしてきたね。ただの記憶力勝負では正答に至ることができなくなっています。まずは、いろいろな文章を読み取る力を身につけましょう!