2022共通テスト 生物基礎 解説とまとめ

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2回目の共通テスト。

 

「思考力を問う」という傾向がはっきりしてきました。
1回目と比較すると、今回は難しく平均点も下がったと思います。「単純な知識を問う」のではなく、「知識をフル活用して考えて解答を導き出す」という形式にはっきりと変わった、という感じがします。今後もこの傾向で出題されるでしょう。

しんぞう先生

では、問題と解説、行ってみましょう!

第1問A

問題
A ホタルの腹部にある発光器には、(a)酵素の一つであるルシフェラーゼと、その基質(酵素が作用する物質)となるルシフェリンが多量に存在する。ルシフェリンは、ルシフェラーゼの作用で、(b)ATPと反応して光を発する。この発光量を測定することで細胞内のATP量を測定できるキットが作られている。現在はこの方法をさらに応用し、(c)測定されたATP量から、牛乳などの食品内に存在している、あるいは食器に付着している細菌数を推定するキットも開発されている。
 

A問1 酵素について

太字(a)に関する記述として誤っているものを、次の①〜⑤のうちから一つ選べ。

 

①化学反応を促進する触媒として働く。
②口から摂取した酵素は、そのままの状態で体内の細胞に取り込まれて働くことはない。
③タンパク質が主成分であり、細胞内で合成される。
④細胞内で働き、細胞外では働かない。
⑤反応の前後で変化しないため、繰り返し働くことができる。

A問1の解答               配点     3点

今回のテストでは、誤っているものを選択せよ、という問題が多かった印象があります。

かんぞうくん

しんぞう先生

なぜ、④の文章が誤っているのか分かる?

だ液に含まれる「アミラーゼ」という酵素は、細胞外で働きますものね。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。ついでに酵素についていくつか。

・酵素の別名は「生体触媒」
・触媒自体は化学反応で変化することはないから、何度でも働くことができる

A問2 ATPについて

問題
太字(b)に関連して、次の細胞小器官 a 〜 c のうち、ATP が合成される細胞小器官はどれか。それを過不足なく含むものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。
 

a 核  b ミトコンドリア  c 葉緑体

 

① a      ② b      ③ c      ④ a , b      ⑤ a , c      ⑥ b , c      ⑦ a , b , c

A問2の解答               配点     3点

しんぞう先生

ミトコンドリアと葉緑体の主な働き、頭に入ってる?

ミトコンドリアは「呼吸(異化)」葉緑体は「光合成(同化)」です。

かんぞうくん

しんぞう先生

呼吸はC6H12O6を分解して、その時に出てくるエネルギーを蓄えるためにATPが合成される。光合成は、光のエネルギーを利用してATPを合成し、このATPに蓄えたエネルギーを使ってC6H12O6を合成する。核の中には、ATPを合成するものは入ってないよ。

A問3 ATP量から細菌数を推定する

問題
太字(c)について、次の記述 d 〜 gのうち、ATP量から細菌数を推定するために、前提となる条件はどれか。その組合せとして最も適当なものを、 後の①〜⑥のうちから一つ選べ。
 

d  個々の細菌の細胞に含まれる ATP量は、ほぼ等しい。
e  細菌以外に由来する ATP量は、無視できる。
f   細菌は、エネルギー源として ATPを消費している。
g  ATP 量の測定は、細菌が増殖しやすい温度で行う。

 

① d , e      ② d , f      ③ d , g      ④ e , f      ⑤ e , g      ⑥ f , g

A問3の解答               配点     3点

この問題、分かりませんでした。こんな内容、教科書に出てこなかったと思います。

かんぞうくん

しんぞう先生

これは、問題をよく読んで考えるタイプの問題ですな。特に知識がなくても解くことができるタイプの問題。問題文中の「前提となる条件はどれか」に注目。

ATP量から細菌数を推定するときの「前提条件は何か」ということですか。

かんぞうくん

しんぞう先生

そう。「この実験観察が成り立つための条件」を聞いているんだ、と置き換えて考えるといいよ。

はい。「d」の文章は細菌の細胞ごとに含まれているATP量が違うと、細菌数を推定できないので、これは前提条件として必要ですね。「e」は細菌以外に由来するATP量を考慮すると、条件によりATP量が変わってくるから細菌数を把握できない。だから「e」も前提条件として必要です。

かんぞうくん

しんぞう先生

「f」について。細菌だけがエネルギー源としてATPを使っているのではなく、すべての生物がATPを使ってるので、容器に付着している細菌数や存在数を調べるためのこの実験の前提条件にはならないね。
「g」は細菌を増やしてからATP量を測定する実験ではないので、今、存在していたり容器に付着している細菌数を調べる実験の前提条件としては相応しくないね。

 



第1問B

B問4 DNAの抽出実験

問題
ナツキさんとジュンさんは、DNA の抽出実験について話し合った。
 

ナツキ
今日の授業で、 ブロッコリーの花芽から DNA を抽出したけど、花芽を使ったのはなぜかな。茎からも花芽と同じように抽出できるんじゃないかな。放課後に実験して調べてみようよ。

ジュン
じゃあ、授業と同じ簡易抽出方法(図1)で、花芽と茎を比べてみよう。

図1

ナツキ
花芽を使ったときと同じように、茎を使っても白い繊維状の物質が出てきたよ。でも、同じ重さの花芽と茎を使ったのに、茎のほうが花芽より少ないね。

ジュン
その理由を考えようよ。花芽と茎の細胞を顕微鏡で観察したら違いが分かるんじゃないかな。

二人は、 (d)花芽と茎を酸で処理し、細胞を解離した後、核を染色して、光学顕微鏡で観察した。

ナツキ
濃く染まっているのが核だね。

ジュン
花芽と茎とを比較すると、花芽のほうが、[ ア ] から、 DNA を多く得やすいんだね。だから、花芽を材料にしたんだね。

ナツキ
ところで、この(e)白い繊維状の物質は全部 DNA なのかな。

ジュン
RNA は DNA と同様にヌクレオチドがつながってできた鎖状の物質だから、 (f)白い繊維状の物質には DNA のほかに RNA も含まれているんじゃないのかな。調べてみようよ。

 

B問4 細胞の写真から考える

太字部(d)について、図2は二人が観察した花芽と茎の細胞の写真である。

この写真を踏まえて、DNA の抽出実験の材料に関する上の会話文中の [ ア ]に入る文として最も適当なものを、後の①〜⑤のうちから一つ選べ。

図2

 

① 核がより濃く染まっているので、核の DNA の密度が高い
② 核が大きいので、核に含まれているDNA 量が多い
③ 細胞が小さいので、単位重量当たりの細胞の数が多い
④ 一つの細胞に複数の核が存在しているので、単位重量当たりの核の数が多い
⑤ 体細胞分裂が盛んに行われているので、染色体が凝縮している細胞の割合が高い

B問4の解答               配点     3点

しんぞう先生

写真を比較すると、花芽の方が細胞の大きさが小さく核の数も多い。その上で、文章中の「同じ重さの花芽と茎を使ったのに」に注目!

そう言われると、③の「細胞が小さいので、単位重量当たりの細胞の数が多い」というのが適当だと思います。

かんぞうくん

しんぞう先生

そうだね。核内のDNAはどの細胞でも同じなので、花芽と茎が同じ重さならば、単純に細胞の数が多い花芽の方が、DNAの量が多いことになるね。

 

B問5 グラフの読み取り

問題
太字部(e)に関連して、白い繊維状の物質に含まれる DNA 量を、試薬 X を用いて測定した。試薬 X は DNA に特異的に結合し、青色光が照射されると DNA 濃度に比例した強さの黄色光を発する。図3は、DNA 濃度と黄色光の強さ(相対値)の関係を表したグラフである。

花芽 10gから得られた白い繊維状の物質を水に溶かして4mL の DNA 溶液を作り、試薬 X を使って調べたところ、0.6(相対値)の強さの黄色光を発した。この実験で花芽 10gから得られた DNA量の数値として最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

図3

 

① 0.019    ② 0.030    ③ 0.075    ④ 0.19    ⑤ 0.30    ⑥ 0.75    ⑦ 1.9    ⑧ 3.0

B問5の解答             配点     3点

点線をつないで直線を引くと、比例のグラフになります!これは簡単だ、と思って③の0.075を選んだら不正解でした・・・。

かんぞうくん

しんぞう先生

これも文章をよく読んでみて。2段落目に「4mLのDNA量」と書いてあるよ。このグラフの横軸の単位を見ると、「mg/mL」と書いてある。ということは、0.075というのは、1mLあたりのmgだから、

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そうか、4mL × 0.075mg = 0.300mgだ!

かんぞうくん

B問6 DNA分解酵素とRNA分解酵素を用いた実験

問題
下線部(f)について、二人はこの仮説を確かめるため、DNA と RNA に結合する試薬 Y を用いた実験を計画した。試薬 Y は青色光が照射されると、 DNA および RNA の量に比例した強さの黄色光を発する。白い繊維状の物質を水に溶かした溶液を三等分して、表1の実験 I 〜 III を行ったところ、仮説を支持する結果が得られた。表 1 中の [ イ ]・ [ ウ ]に入る結果の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑨のうちから一つ選べ。
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B問6の解答               配点     4点

しんぞう先生

DNAもRNAも試薬Yを照射されると、それぞれの量に比例して黄色光を発する。白い繊維状物質には、DNAもRNAも含まれている。これをまず3等分にした、とのこと。その図を書いて、分解酵素で分解されたものにバツ印をつけてみて。

はい。

かんぞうくん

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こうやって図で書くと、正しく解答できますね。

かんぞうくん

 



第2問A 

A問1 光学式血中酸素飽和度計を用いた測定

問題
ヒトでは、細胞の呼吸に必要な酸素は、赤血球中のヘモグロビン(Hb)に結合 して運ばれる。動脈血中の酸素が結合したヘモグロビン(HbO2)の割合(%)は、 図1のような光学式血中酸素飽和度計を用いて、指の片側から赤色光と赤外光とを照射したときのそれぞれの透過量をもとに連続的に調べることができる。図2 は、Hb と HbO2が様々な波長の光を吸収する度合いの違いを示しており、縦軸の値が大きいほどその波長の光を吸収する度合いが高い。(a)光学式血中酸素飽和度計では、実際の測定値を、あらかじめ様々な濃度で酸素が溶けている血液を使って調べた値と照合することで、動脈血中の HbO2の割合を求めている。2-1Image

 太字部(a)に関連して、図2を参考に、光学式血中酸素飽和度計を用いた測定に関する記述として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

① 動脈血では、赤色光に比べて赤外光の透過量が多くなる。
② 組織で酸素が消費された後の血液では、赤色光が透過しやすくなる。
③ 血管内の血流量が変化すると、それに伴い赤色光と赤外光の透過量も変化するため、透過量の時間変化から脈拍の頻度を知ることができる。
④ 赤外光の透過量から、動脈を流れる Hb の総量を知ることができる。

A問1の解答       ③          配点     3点

しんぞう先生

図2のグラフから、HbとHbO2では吸収する光の波長が違うことが分かる。この指に挟んだ機械は、指を流れる血液の明暗をキャッチできる能力を持っているので、明暗の時間変化を見れば脈拍の頻度を知ることができるよ。

そういう仕組みなんですね。この問題文を読むことで初めて仕組みを理解しました。この機械はすごいですね。

かんぞうくん

A問2 酸素解離曲線

問題
ある人が富士山に登ったところ、山頂付近(標高 3770 mの地点)で息苦しさを感じた。そこで、光学式血中酸素飽和度計を使って HbO2の割合を計測すると、80% だった。図3を踏まえて、山頂付近における動脈血中の酸素濃度(相対値) と、動脈血中の HbO2のうち組織で酸素を解離した割合の数値として最も適当なものを、後の①〜⑥のうちからそれぞれ一つずつ選べ。なお、山頂付近における組織の酸素濃度(相対値)は 20 であるとする。
 

山頂付近における

動脈血中の酸素濃度(相対値)の値は?
動脈血中のHbO2のうち組織で酸素を解離した割合(%)は?

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① 30      ② 40      ③ 60      ④ 75      ⑤ 80      ⑥ 95

 

A問2の解答     

動脈血中の酸素濃度(相対値)の値  ②「40」  配点   2点
動脈血中のHbO2のうち組織で酸素を解離した割合(%)  ④「75」      配点     2点

酸素解離曲線の問題は苦手です。

かんぞうくん

しんぞう先生

これも問題文を読みながら、指示されている値についてグラフ上に印をつけることから始めるといいよ。

はい。まずは、「山頂付近のHbO2の割合は80%」と文章中に書いてあります。「縦軸(全HbにおけるHbO2の割合)の80」のところと「動脈血の実線の交わるところ」の横軸(酸素濃度)の数値を見ればいいのですね。ということで、動脈血中の酸素濃度の相対値は②の40ですね。

かんぞうくん

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しんぞう先生

おっけい。文章の最後に「山頂付近における組織の酸素濃度(相対値)は20」とあるので、「横軸20」とグラフの点線が交わる部分の縦軸(全HbにおけるHbO2の割合)を見るんだよ。その値の20が、組織におけるHbO2の割合ということになる。

はい。ここからもうひとふんばり計算をするんでしたよね。動脈血中のHbO2のうち組織で酸素を解離した割合(%)を求めたいから、こんな式になります。

かんぞうくん

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丁寧に計算して、解答は④の75%になります。

かんぞうくん

 



第2問B

問題
免疫には、(b)自然免疫(c)獲得免疫(適応免疫)とがある。獲得免疫には、細胞性免疫と(d)抗原抗体反応の関与する体液性免疫とがある。

B問3 免疫

太字(b)について、細菌感染の防御における役割を調べるため、実験1を行った。実験1の結果から導かれる後の考察文中の [ ア ]・ [ イ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

実験1  大腸菌をマウスの腹部の臓器が収容されている空所(以下、腹腔) に注射した。注射前と注射4時間後の腹腔内の白血球数を測定したところ、図4の実験結果が得られた。2-3Image

大腸菌の注射により、多数の好中球が、 [ ア ] から周辺の組織を経て腹腔内に移動したと考えられる。好中球は、[ イ ]とともに、食作用により大腸菌を排除すると推測される。

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B問3の解答             配点     3点

しんぞう先生

体内に異物が侵入すると炎症が起きるよ。

炎症・・・侵入した付近の毛細血管が拡張したり、血液がたまって膨らむ。発熱や痛みを伴い、赤く腫れる。

炎症した所に、好中球、マクロファージが集まり、拡張した血管からそれらが組織に出て病原体を倒すんですね。

かんぞうくん

B問4 記憶細胞の働き

問題
太字(c)に関連して、移植された皮膚に対する拒絶反応を調べるため、実験 2を行った。実験 2の結果から導かれる考察として最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

実験 2   マウスX の皮膚を別の系統のマウス Y に移植した。マウス Y では、マウス X の皮膚を非自己と認識することによって拒絶反応が起こり、移植された皮膚(移植片)は約10日後に脱落した。その数日後、移植片を拒絶したマウス Y にマウス X の皮膚を再び移植すると、移植片は 5〜6日後に脱落した。

① 免疫記憶により、2度目の拒絶反応は強くなった。
② 免疫記憶により、2度目の拒絶反応は弱くなった。
③ 免疫不全により、2度目の拒絶反応は強くなった。
④ 免疫不全により、2度目の拒絶反応は弱くなった。
⑤ 免疫寛容により、2度目の拒絶反応は強くなった。
⑥ 免疫寛容により、2度目の拒絶反応は弱くなった。

B問4の解答             配点     3点

この図を書いてみました。図を書くことで解答できました。

かんぞうくん

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かんぞうくん

記憶細胞が、移植したXマウスの皮膚をすぐに異物と判断して対処したのですね。だから2度目は1度目よりも早くXマウスの皮膚が脱落しました。

B問5 血清療法

問題
太字部(d)に関連して、抗体の働きを調べるため、実験3を行った。後の記述 a 〜 d のうち、実験3でマウスが生存できたことについての適当な説明はどれか。それを過不足なく含むものを、後の①〜⓪のうちから一つ選べ。    

実験3 マウスに致死性の毒素を注射した直後に、毒素を無毒化する抗体を注射したところ、マウスは生存できた。

a . 予防接種の原理が働いた。
b . 血清療法の原理が働いた。
c . このマウスのT細胞が働いた。
d . このマウスのB細胞が働いた。

① a     ② b     ③ c     ④ d     ⑤  a , c     ⑥ a , d     ⑦  b , c     ⑧ b , d     ⑨  a , c , d     ⑩  b , c , d

B問5の解答             配点     3点

しんぞう先生

実験3の説明文に「毒素を注射した直後に」に着目。「直後に」とわざわざ指定しているね。それと、「抗体を注射した」に着目すると、実験3で働いた抗体は時間をかけて自ら作ったものではないことが分かるね。

はい。[a]の予防接種は、獲得免疫の二次応答の働きを利用しているので、効果が現れるのは数週間後です。あと、[c]のT細胞は抗体を作らないし、[d]については、このマウスのB細胞が働いた、と書いてあります。実験3は、時間をかけて体内で作った抗体をそのまま使った、ということではないから今回の問題には当てはまらないです。

かんぞうくん

 



第3問A 

問題
A 年降水量の多い日本列島では、主に(a)気温によってバイオームが決まる。中部地方の内陸から東北地方を経て北海道南部にまで主に見られるバイオームは、ブナなどの落葉広葉樹が優占する夏緑樹林と、そこに生息する生物とから成立している。

ブナの葉を食うガであるブナアオシャチホコ (以下、ブナアオ)の幼虫は、しば しば大発生して一帯の葉を食いつくすことがある。(b)この幼虫は、日当たりの良い林冠につくられる陽葉よりも、日当たりの悪い下層につくられる陰葉から食い始める。

(c)ブナアオが大発生すると、その幼虫を食う甲虫のクロカタビロオサムシが追いかけるように大発生する。同様に、ブナアオの蛹を栄養源とする菌類のサナギタケも大発生する。そのため、 ブナアオの大発生は長続きしない。

A問1 垂直分布

下線部(a)について、地球温暖化の進行により、今後 100 年間で年平均気温は2〜4°C 上昇すると見積もられている。これにより、現在の中部地方において見られる図 1 のようなバイオームの分布が変化したとするとき、標高 500 m と標高 1500 m ではそれぞれどのようなバイオームが成立すると予測されるか。予測の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

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A問1の解答             配点     3点

しんぞう先生

図1は日本のバイオームの「垂直分布」の図だね。

図1は日本のバイオームの「垂直分布」の図だね。

日本のバイオームだから、寒い方から、針葉樹林、夏緑樹林、照葉樹林、亜熱帯多雨林ですね。100年後に気温が2〜4℃も上がると見積もられてるのかー。これは大変なことになりそうですね。

かんぞうくん

しんぞう先生

ということで、100年後にはバイオームがそのまま上の方向に移動することになる。

そう考えると、今の夏緑樹林と照葉樹林はさらに標高が高いところになるので、⑥が答えですね。

かんぞうくん

A問2 光合成曲線

問題
太字部(b)に関連して、図2は陽葉と陰葉における、光の強さと二酸化炭素吸収速度との関係である。図中の下向きの矢印は、陽葉か陰葉のいずれかが日中に受ける平均的な光の強さを示している。大発生したブナアオが陽葉と陰葉を共につけるブナ個体の葉を食い進むと、二酸化炭素吸収速度はどのように変化すると予測されるか。ブナ1個体当たりの変化の傾向を示すグラフ として最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。
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A問2の解答   ⑥    配点  3点

しんぞう先生

ブナアオは陰葉から食べる、とのこと。

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では、最初の方は陰葉から無くなっていくので、そんなに光合成には影響なさそうですね。だから、二酸化炭素吸収速度は高い位置のままですね。

かんぞうくん

しんぞう先生

しかし、陽葉まで食べ進んでいくと、どんどん光合成ができなくなっていくので急速に二酸化炭素吸収速度の相対値が低くなっていく。

この状況にぴったりなグラフは⑥ですね。

かんぞうくん

A問3 生産者と消費者

問題
太字部(c)について、このような食物連鎖を含む生態系におけるブナアオ、クロカタビロオサムシ、およびサナギタケの栄養段階の組合せとして最も適当なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ。
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A問3の解答  ⑤    配点  3点

図で示すとこんな感じです。

かんぞうくん

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第3問B

問題
自然の生態系内で窒素は循環しているが、人間活動はその経路や量を変化させることがある。農地では、農作物が収穫されて食物として利用される。食物に入っていた窒素は排泄物として下水道に入り、その後、河川に出ていく。この場合、(d)下水中の窒素を取り除かないと、河川や海の富栄養化を引き起こす。また、森林では、(e)樹木の伐採および除草剤の散布による植生の一時的な消失が 窒素の循環に影響することが知られている。

B問4 窒素固定や窒素同化、脱窒

太字部(d)について、下水処理場では、生物を利用して下水から窒素を取り除いている。この下水処理過程の順序として最も適当なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選べ。

① 無機窒素化合物の生成  →  脱窒
② 無機窒素化合物の同化  →  脱窒
③ 窒素固定  →  脱窒
④ 窒素固定  →  無機窒素化合物の生成
⑤ 窒素固定  →  無機窒素化合物の同化

B問4の解答                配点     3点

しんぞう先生

この分野の専門用語をいくつか挙げるね。

窒素固定
・大気中のN2を無機窒素化合物のNH3やNH4+にする(還元)こと。
・窒素固定細菌(アゾトバクター、クロストリジウム、根粒菌)が行う。

窒素同化
・生物が外界から取り入れた無機窒素化合物から、アミノ酸、タンパク質、核酸のような有機窒素化合物を作り出すこと。
・窒素固定細菌は、大気中のN2を窒素固定して、そのまま窒素同化まで進めることができるが、植物や動物は大気中のN2から窒素同化をすることができない。

植物や動物は、大気中のN2を使ってアミノ酸やタンパク質を作ることはできないのですね。こんなに大気中にはN2が多いのに残念ですね。では、植物や動物はどうやって窒素同化をするのですか?

かんぞうくん

植物

硝酸イオンやNH4+を根から吸収して、有機化合物を合成する。

動物

植物や動物を食べて有機化合物を取り入れ、自分の体に必要な有機化合物を合成する。

あと、脱窒とは何ですか。

かんぞうくん

脱窒

有機窒素化合物を、NH4+、 NO2、 NO3 などの無機窒素化合物にして、さらに脱窒素細菌の働きでN2にまで変えること。

ということは、有機窒素化合物を含む下水が河川に流れ出てしまうと、富栄養価が進むので、一旦無機窒素化合物に変える。そして、それを脱窒素細菌によって窒素N2にまで変えているのですね。

かんぞうくん

B問5 植生の消失と窒素濃度の変化

問題
太字部(e)について、人間活動によって森林植生の大部分が一時的に消失した後、そこから流れ出す河川水の窒素濃度の変化に関する記述として最も適当なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ。

① 植生が消失すると上昇し、植生の回復後も高い状態が続く。
② 植生が消失すると上昇し、植生の回復後に低下して元に戻る。
③ 植生が消失しても変化しないが、植生の回復後に上昇する。
④ 植生が消失しても変化しないが、植生の回復後に低下する。
⑤ 植生が消失すると低下し、植生の回復後に上昇して元に戻る。
⑥ 植生が消失すると低下し、植生の回復後も低い状態が続く。

B問5の解答               配点     3点

しんぞう先生

植物は土壌中の無機窒素化合物を根から取り入れ、有機窒素化合物に変えているのは、さっきの問題の解説で取り上げたね。では、植生が消失すると土壌中の無機窒素化合物は、どうなる?

雨などで河川に流されてしまいます。

かんぞうくん

しんぞう先生

そう。河川水の窒素濃度は上がってしまうよね。そして植生が元に戻ったとしたら、河川水の窒素濃度はどうなる?

はい。河川水の窒素濃度は最初の状態に戻ります。正解は②ですね。

かんぞうくん

しんぞう先生

これで2022年度の共通テスト生物基礎が全て終わったよ。

今回のテストはこれまでのものと比べて、難しかったです。

かんぞうくん

しんぞう先生

知識をフルに駆使して、自分の頭で考える、という作業が求められるからね。今後もこの傾向は続くと思うよ。早めに、「生物(基礎)」は暗記すれば何とかなる、という考えを改めて、常に「何故こうなるのだろうか」、と自分に問い続けるようにして勉強を進めていってね。